アキバのつぶやき
2025年10月
2025.10.18
早朝のウォーキングと金木星の香り
朝の空気には、理屈抜きの説得力がございます。特に、今の季節。秋の入口に差しかかるこの時期は、早朝のウォーキングをしていると、肌を撫でる風が「今日も動き出そう」と背中を押してくれる感じがします。しばらく暑さにカマかけて、ウォーキングをしていませんでした。ところが、三日前からなぜか、気分がウォーキングへと駆り立てました。そして、街路樹の間から漂ってくる金木犀の香りは、その背中をさらにそっと押す“追い風”のようなものです。
ビジネスの世界では「見える成果」が重視されます。しかし本当に価値を生むのは、数字では測れない“におい”のような部分です。信頼、雰囲気、安心感。それらは金木犀の香りと同じく、目には見えませんが、確かに存在し、人の心を動かします。
早朝のウォーキングは、自分の思考を整える最良の時間だとあらためて感じます。スマホも会議もない。世界がまだ目を覚ます前に、静かに自分と向き合える。その中で漂う金木犀の香りが、「急がなくてもいいぞ!」と語りかけてきます。スピードや効率を追うだけが前進ではない。しばし立ち止まり、考えることもまた、前に進むための重要な一歩なのです。
仕事でも人生でも、成果を急ぐあまり、「香りのない行動」をしていないだろうか。金木犀のように、控えめでありながら、確かに周囲に良い影響を与える存在。そんな“香りのある働き方”をしたいと思います。
ウォーキングを終えて振り返ると、金木犀の木が朝陽を受けて黄金色に光っていました。あの香りのように、静かに、しかし確実に誰かの一日を豊かにする、そんな仕事をしていきたい。
2025.10.17
不動産屋から、不動産家に、「地域と人をつなぐ」
営業という仕事を長くやっていますと、「売るという行為」に慣れてしまうきらいがあります。数字を追い、契約を積み上げ、月末の報告でホッとするそそれが大方の営業の仕事のリズムになります。けれども、あるとき気づくことがございます。
それは、「売れた先に、何が残るのか?」というふとした疑問です。
不動産屋の仕事は、どうしても取引の瞬間で完結しがちです。しかし本当の仕事は、その先にあるのです。契約書を交わしたあと、その場所でどんな暮らしが始まり、どんな未来が生まれるのか。また、思いである相続した実家を、買主さんは今後どのように活用するのか。マイホームを建てるのだろうか?それなら、どんな家を建てて、どんな家庭が築かれていくのだろうか。
そこまで想像できてこそ、不動産の本当の価値を扱っているといえると思います。
不動産家とは、モノではなく「人」を扱う営業マンのことだと思います。土地の形や建物のスペックより、その場所で人がどう生きるかを考える。 それができる営業マンは、もはや取引のただの仲介者ではない。大袈裟ですが暮らしの編集者であり、地域の語り部にもなります。
ネット社会では、不動産の情報は、どこにでもございます。価格も比較されます。だからこそ、差が出るのは“考え方”です。自分が何を信じて、どんな世界をつくりたいのか。その軸がある人だけが、顧客と長く信頼関係を築けるのではないでしょうか。
従来からある不動産屋が「売る力」で勝負するなら、不動産家は「つなぐ力」で勝負する。短期の成果よりも、長期の関係を積み上げる。営業マンとしての技術は同じでも、目的が変われば、日々の仕事の意味がまるで違って見えてきます。
2025.10.16
気分がパフォーマンスをあげる!
朝、出勤前のカフェで、薫り高い珈琲の匂いを嗅ぎながら、お気に入りの音楽を聴く。それだけで、今日の商談がうまくいきそうな気がする。そんな「なんとなくの気分」が、実は仕事の成果を左右していることがあると思います。
たとえば同じプレゼンでも、気分が良いときは言葉に勢いがあり、表情にも自然な余裕が出てきます。
私は最近、「気分のメンテナンス」も仕事の一部だと思うようになりました。気分は天気と似ていて、晴れたり曇ったりするもの。
そしてもうひとつ大切なのは、気分を上げる「小さな儀式」をもつこと。メールを開く前に一杯のコーヒーを飲む。デスクの上に花を飾る。短い時間でも好きな香りを楽しむ。そんな些細な行動が、仕事モードへの切り替えスイッチになります。
気分を整えるとは、自分のパフォーマンスを“デザインする”ことでもあります。自分が最も集中できる時間帯や環境を知り、それに合わせて一日の流れを調整していく。これは「自己管理」というより、「自分との対話」に近い感覚です。
効率やスピードが求められる時代だからこそ、気分を軽んじずにいたい。気分は努力の敵ではなく、努力を支える土台なのです。
一日の始まりに、自分の気分を観察してみる。「今日の私」はどんな空模様か?その小さな問いかけが、仕事の質を少しずつ変えていく気がします。
つまりは、仕事場の環境の劣悪が、その企業の業績と比例することにつながるのではという仮説を持ちました。いい発想、顧客の笑顔をイメージすることができる仕事場の雰囲気が、お客様に伝播し良いご縁を頂くことになるのでしょう。
2025.10.14
目標とフィードバックについて
「目標を明確に持て」というのは、ビジネスの現場では,もはや常識になっています。ところが、その“常識”が逆に人を苦しめていることも多いのではないでしょうか。なぜなら、目標はあくまで「行動を方向づけるための仮説」にすぎず、現実のビジネスは常に仮説修正の連続だからです。
多くの人が途中で挫折するのは、目標が間違っていたからではなく、目標を絶対視してしまったからです。たとえば「年間契約件数何件」と掲げるのはわかりやすいけれど、その数字が出てきた背景が、どんな顧客と、どんな関係を築いて、どんな価値を提供するか?というストーリーが抜け落ちています。
数字はあくまで物語の「結果指標」であって、物語そのものではございません。そこで重要になるのが、「フィードバック」です。
だから、行動→結果→修正というサイクルをどれだけ短く、正確に回せるかが成果の質を決めます。如何にして、PDCAを回し続けることが出来るかに尽きます。。つまり、成功とは目標の達成ではなく、仮説修正の精度を高めるプロセスなのです。
ドラッカーの言葉に、「計画とは、未来に対する現在の意思決定である」とあります。すなわち、未来は変数だらけだということです。だから、最初に決めた目標を守り抜くことよりも、フィードバックを通じて目標そのものを進化させることのほうが、実務的にははるかに合理的です。
結局のところ、ビジネスにおける「強さ」とは、最初から正しい目標を立てる力ではなく、質の良い仮説を立てる仮説力と、それを修正していく、継続力と洞察力の巧拙という事になるのです。
2025.10.13
「売れるものを作る」不動産ビジネス
ユニクロの柳井正会長が、日経新聞の取材で語った、「作ったものを売る商売から、売れるものを作る商売へ」という言葉は、製造業だけの話ではございません。私たちの不動産ビジネスにも、そのまま響く言葉です。
これまで多くの業者は「できた物件をどう売るか」という発想で前線に立ってきました。間取り、立地、価格、広告。いずれも「出来上がった商品をどう売り切るか」の議論です。 でも、いま必要なのは「その物件が、誰のどんな暮らしを支えるのか」という構想から逆算して設計する発想が求められます。
「売れるものを作る」とは、単にマーケティングを強化することではございません。生活者の価値観の変化、働き方や家族構成の多様化を読み取り、「住まい」という概念そのものを再定義することだと思うのです。
たとえば、コロナ以降に増えたリモートワーク需要をどう捉えるのか。単に「書斎スペースをつけました」では不十分です。それは「作ったものを売る」発想です。むしろ「家庭と仕事の境界を柔らかくつなぐ住空間とは何か?」という問いから設計を始める。これが「売れるものを作る」につながる発想です。
今回の柳井会長の言葉の背景には、「供給と需要をつなぐ」だけの商売から、「価値を構想する」経営へのシフトがあるように感じます。不動産もまた、単なる建物や土地を扱うビジネスではなく、「人の暮らしという時間をデザインする産業」であると捉え直すべき時がきたということだろう。そのためには、営業マンも“売り手”ではなく、“共創者”でなければなりません。
顧客の生活観を聞き出し、潜在的な欲求を形にする。その対話力と、読解力と言語化力が、新しい付加価値を生み出します。営業マンに求められる能力は、多様化の時代になり、ますます向上していきますね。だからこそ、ここで差別化を見いだせる不動産業者が、生き残っていくことになるのでしょう。
柳井会長の言葉の、「売れるものを作る」は、不動産会社にとっては、結局のところ「未来の暮らしを編集する企業」に変化しろ!、に尽きます。
単に物件を売るだけではなく、「この場所で、こんな人生を描きたい」と思わせる物語を提案できるかどうかが、今後の不動産営業に求められるセンスではないかと強く感じました。
2025.10.12
トランプ大統領が平和賞を受賞できなかった理由
毎年話題を呼ぶノーベル平和賞。今年も予想に反して、ドナルド・トランプ前大統領の名は呼ばれませんでした。中東和平に一部の実績を残したとはいえ、世界が見たのは「分断」と「衝突」でした。
これは、私たちのビジネスの世界でも同じ構図がございます。短期的な成果を出したリーダーが、長期的な信頼を失うことが発生します。特に不動産、住宅業界では多く目にします。その理由は、業界の体質なのか慣習なのか、月次の契約本数を目標にして活動している企業が大半だからです。
トランプ氏は交渉術と突破力においては卓越していました。ですが、ノーベル賞が評価するのは「結果」ではなく「理念」です。
この違いは、経営における「効率」と「意味」の関係に似ています。
トランプ氏が排他的な姿勢を強める一方で、平和賞は「対話」「包摂」「信頼」といった文脈を重視します。このギャップは、まさに現代社会が抱える“成功の再定義”を象徴しているとおもいます。
経営者もまた、トランプ的リーダーシップに惹かれやすい。強い言葉と即断で組織を動かすスタイルは、一見、成果が出るでしょう。ですが、それが続かないのは、人の心が納得していないからです。
平和賞がトランプ氏を選ばなかったという事実は、政治だけでなく、私たち自身の“リーダー観”を静かに問い直しているのではないでしょうか。
2025.10.11
関係を続ける力と、終わらせる勇気
詩人・吉野弘の「祝婚歌」は、その昔、結婚式などでよく朗読されました。一見、結婚を祝う詩ですが、その本質は“関係のマネジメント論”に近いとおもいます。
「正しさを主張するために 相手を傷つけてもいいという考えを、捨てること」
たとえば、今回の自民党と公明党の連立関係は、政治の世界における長期的な協働モデルでした。理念の違いを抱えながらも、互いを尊重し、妥協と調整を積み重ねてきました。企業経営に置き換えれば、異なる文化や価値観を持つパートナー企業との「共創関係」をいかに維持するか、というテーマに相通じます。
ですが、どんな関係にも“最適期限”がございます。環境や目的が変われば、関係の再定義が必要となります。それを怠ると、関係は惰性に変わり、やがて摩擦と疲弊を生む結果を招きます。だからこそ、「終わらせる勇気」もまた、経営の力なのだと言えます。
それと、祝婚歌の中に、もう一つの示唆がございます。
「勝つこと」よりも「ともに機能すること」に価値を置き、必要なときに静かに距離を取り直す。それこそが、変化の時代をしなやかに生き抜くリーダーシップではないでしょうか。
2025.10.10
免疫細胞と哲学的思考
ニュースでノーベル賞の発表があるたびに、秋の空気が少し澄んで感じられます。科学の話題でありながら、どこか文学的な香りがするのは、受賞者たちの歩みが「人間の探求」という普遍的な営みと重なるからでしょう。
今年もまた、免疫に関する研究が注目されました。私たちの体の中では、無数の細胞たちが昼夜を問わず働いています。その中心にいる免疫細胞は、外からの異物を見分け、排除し、時には過剰に反応して自らを傷つけてしまう。まるで、人間の思考そのもののようです。
哲学的に考えれば、免疫とは「自己」と「他者」を識別する能力のことです。免疫が強すぎれば、他者を拒絶し、弱すぎれば、自分を保てない。人の社会もまた、これに似ています。異なる意見や価値観をすぐに「排除」してしまうと、思考の多様性が失われていく。
でも、何でも受け入れてしまえば、自分という輪郭が曖昧になります。
この「ほどよさ」、塩梅というバランスこそ、免疫にも哲学にも必要なのかもしれませんね。
ノーベル賞を受け取る研究者の多くは、成果を誇るよりも、「わからないことの中にいる時間の長さ」を語ります。未知と共存する姿勢。それは、免疫細胞が異物と出会いながら、少しずつ賢くなっていく過程にも似ていると思います。思考もまた、異質なものに触れることで鍛えられる。完全に同質な世界では、発見も成長もありません。
私たちは日々、自覚なく体の中で小さな闘いを繰り返しながら、生きています。免疫細胞が静かに学びを重ねるように、心もまた、出会いや葛藤を通して自分を更新していきます。
ノーベル賞の輝きの奥にあるのは、そんな「日常の哲学」なのかもしれませんね。
受賞おめでとうございます。
2025.10.10
幸運は準備された心のみに宿るから
フランスの科学者ルイ・パスツールの言葉に、「幸運は準備された心のみに宿る」というものがあります。ノーベル化学賞を受賞した北川進教授のニュースを聞き、この言葉を初めて知りました。
北川教授が取り組んだのは、分子レベルで空間を設計する「多孔性配位高分子(MOF)」という分野です。周囲が関心を示さない時期から、ひたすら基礎研究を続けてこられました。結果として、その「地味な準備」が世界を変える発見につながったのです。
不動産ビジネスの現場でも、同じ構造があります。売却や仕入れの「タイミングが良かった」と言われることがありますが、実際は偶然ではありません。日々、現場を歩き、地域の変化を観察し、地域の肌感覚を積み重ねている人ほど、「偶然のような幸運」、セレンディピティをつかみ取っているのでしょう。同時に野村克也監督の言葉を思い出します。「勝ちに不思議あり、負けに不思議なし」です。日々の地道な営業努力を怠っていれば、商談の場をいただくことはできないという事です。
たとえば、ご相続物件のご売却相談が急に舞い込むことがあります。それを「運が良かった」と片づけるのは簡単ですが、背景には、普段から誠実に地域との関係を築き、信頼を積み上げてきた努力があります。つまり「準備された心」が、偶然の出会いを必然の成果に変えているのです。
市場が大きく動くときほど、この差が顕著になります。金利上昇や税制改正といった外部要因はコントロールできません。しかし、その変化をチャンスに転じられるかどうかは、過去の準備量に比例します。情報収集を習慣化し、法改正や都市計画の動向に敏感であるほど、“運”が味方する確率は高まります。
北川教授の研究人生が示しているのは、「運を待つ人」ではなく、「運を呼び込む人」になるという姿勢です。ビジネスの現場においても、成功を左右するのはセンスや運ではなく、地道な準備と観察と洞察の積み重ね。所謂、無形の力の向上と蓄積です。
2025.10.09
鉄の女サッチャーと、日本のリーダーシップ
政治の世界において「鉄の女」といえば、やはりマーガレット・サッチャー英国首相を思い浮かべます。強固な信念と、明快な言葉で国を導いたリーダー。その姿は、時に批判を受けながらも「決める政治」を体現した存在でした。彼女が残した本質的な問いは、性別を超えて「リーダーとは何か」ということに尽きると思います。
いま、日本でも女性初の自民党総裁が誕生する可能性が高まっています。歴史的な瞬間という報道が踊りますが、私はこの出来事を「女性だから」ではなく、「どんなリーダーシップを発揮できるのか」という観点で見ていきたいと思っております。サッチャーが尊敬されたのは、女性だったからではなく、国家の方向性を明確にし、迷わずに実行したからです。強いリーダーシップを発揮したということに尽きます。
では、リーダーシップとは?それは、理念を現実に翻訳する力であり、触媒でもあります。時代の空気を読んで動くことではなく、むしろ空気を変えていく。経営に置き換えれば、「売上目標を達成する人」ではなく、「組織の意味を再定義できる人」がリーダーといえるでしょう。サッチャーが鉄の女と呼ばれたのは、妥協を拒んだ頑固さではなく、社会を動かす“軸”を持っていたからです。
もし日本で女性初の総裁が誕生したなら、それは単なる“象徴”ではなく、政治文化の構造変化を促す転換点であってほしいと強く願います。リーダーとは、男性か女性かではなく、「何を信じ、どう伝えるか」。そこに尽きます。
日本に必要なのは、“鉄の女”のような強さよりも、“芯のある柔軟さ”かもしれません。強く、しなやかに、そして誠実に。時代は、そうしたリーダーを待っているように思います。
大いに期待していきましょう。
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