アキバのつぶやき
2026.01.25
ひふみんから考える、「負け」というビジネスの作法
先日亡くなられた将棋棋士・加藤一二三さん、いわゆる「ひふみん」の歩みを振り返ると、「負け」というものの捉え方について、ビジネスにも通じる重要な示唆が見えてきます。
将棋は勝ち負けが極端に明確な世界です。対局が終われば、必ずどちらかが負ける。そして、「負けました」と発言し、一礼し投了となります。しかもその事実は、記録として半永久的に残ります。
ひふみんはその世界で、勝利と同じくらい、いやそれ以上に多くの敗北を経験してきました。それでも彼は、負けを人生の汚点のようには扱いませんでした。
一方ビジネスの現場では、負けを過剰に恐れる傾向があります。失注、撤退、失敗プロジェクト。これらは往々にして「なかったこと」にされ、語られなくなります。しかし、これは戦略的に見ると非常にもったいない。
それは、負けというものは、もっとも情報量の多いデータだからです。ひふみんの特徴は、負けを感情から切り離していた点にあります。負けた将棋を淡々と振り返り、「ここが悪かった」と局面単位で語る。そこに自己否定はありません。
これはビジネスでも同じです。負けを人格や能力の問題にしてしまうと、学習は止まります。必要なのは、意思決定と結果を切り分ける冷静さです。また、ひふみんは勝ちに執着しすぎなかった棋士でもあります。常に「この局面での最善手」を考え続けた。その結果として勝つこともあり、負けることもある。
この姿勢は、短期的成果に振り回されがちなビジネスにおいて、非常に示唆的です。負けとは、終わりではありません。次の一手を考えるために、盤面が更新されたという事実にすぎないのです。
ひふみんの人生が教えてくれるのは、勝ち続ける方法ではなく、負けを使い続ける知性です。ビジネスにおいても、長く成果を出し続ける人や企業ほど、負けを隠さず、誇張せず、静かに活用しているのだと思います。
加藤一二三先生のご冥福をお祈りいたします。
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