アキバのつぶやき
2026.01.22
試験とAIについて
最近、AIが各種試験で高い正解率を出しているという話題を耳にします。これを不動産資格試験、たとえば宅地建物取引士や管理業務主任者に置き換えて考えると、話はぐっと分かりやすくなります。
不動産資格試験は、よくできた試験です。条文、判例、数値、手続き。どれも「正解が一つに定まる」ように設計されています。あらかじめ範囲が決められ、出題形式も安定している。これは公平性を担保するためには不可欠ですが、同時にAIが最も力を発揮しやすい条件でもあります。AIが高得点を取るのは、何も不思議なことではありません。
不動産資格試験が測っているのは、「知識を正確に呼び出し、条件に当てはめる力」です。これは実務に必要な能力の一部ではありますが、実務そのものではありません。むしろ、実務では「どの論点を問題にすべきか」を見極める力のほうが重要です。
現場の不動産取引は、教科書通りに進みません。境界が曖昧、当事者の理解が食い違う、感情が先行する。こうした状況で求められるのは、条文知識よりも、判断の順序と説明の設計です。ここには正解が一つしかない、ということはほとんどありません。資格試験の点数が高い人が、必ずしも優秀な不動産実務家になるわけではない理由はここにあります。
試験は「ルールが固定された世界」での能力を測ります。一方、実務は「ルールはあるが、状況は毎回違う世界」です。AIが強いのは前者であり、後者ではまだ限定的です。むしろ注目すべきは、AIが簡単に正解できる試験を、人間が「専門性の証明」として使い続けている点です。
資格が無意味だという話ではありません。最低限の共通言語として、資格は今後も必要です。ただし、それ以上の価値を過剰に期待すると、現場とのズレが生じます。不動産資格試験は、入口のフィルターです。通過点であって、ゴールではありません。
AIが高得点を取る時代には、その位置づけがより明確になります。知識は前提条件であり、差がつくのはその後です。AIに勝つことを目標に勉強する必要はありません。むしろ、AIが簡単に解ける問題を、人間はさっさと通過し、その先でしか発揮できない価値判断、説明、信頼の構築に時間を使うべきです。
不動産の仕事は、最終的に「人が決める」仕事です。資格試験の正解率が高いことと、現場で信頼されることは、必ずしも一致しない。その当たり前の事実を、AIは静かに教えてくれています。
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