アキバのつぶやき
2025.12.12
震える
昔の中国では、「蜃(しん)」という海の生き物が怪異をもたらすと信じられていたそうです。蜃は海中に棲み、気を吐いて空に幻の城を描く。その現象は、いまも「蜃気楼」という言葉として残っています。
科学が未発達だった時代、人々は「見えない現象」を「見える姿」に置き換えて理解しようとしました。地震の「震」という漢字を眺めてみると、そこにも同じ発想を見ることができます。
上に「雨」、下に「辰」。天の異変と、地のうごめきが一つの文字に封じ込められている。地下で何かがたまり、限界に達したとき、世界はふるえる。彼らはそれを「蜃」や「龍」の動きとして表現しました。
いま私たちは、プレートの歪みや断層のずれという言葉で地震を説明します。しかし、構図そのものは昔とほとんど変わっていません。見えない場所で力が蓄積され、ある瞬間に解放される。そのイメージを、かつては生き物の姿に託し、いまはグラフや数式に託しているだけのことです。
漢字というのは、単なる記号ではなく、古代の「世界の理解のしかた」が化石のように凝縮されたものだと思います。