アキバのつぶやき

2025.06.02

令和の火付盗賊改方!

 定休日の水曜日、夜7時は至福のひと時です。それは、野球放送がなければ、時代劇の鬼平犯科帳の番組が放映されるからです。
悪人をぶった切る厳しさの中に、男の優しを醸し出す、長谷川平蔵はあこがれる生き方です。

さて先週、「拘禁刑」という言葉を初めて聞きました。 2025年6月1日以降に罪を犯した人に適用される、日本の新たな刑罰です。これは、実に118年ぶりの大きな転換となります。

 これまでの刑罰は「懲らしめ」という側面が強かったのですが、「拘禁刑」では「受刑者の更生」に軸足が置かれます。目的は、ずばり再犯の防止です。
では、「拘禁刑」の導入によって、具体的に何が変わるのでしょうか?
 
最も重要な変化の一つが、受刑者と刑事施設側の「対話」が重視されることです。これまでの「管理対象」という見方から、個人の特性に配慮し、対話を通じて更生を促す方向へシフトします。そのための具体的な取り組みとして、「リフレクティング」というプログラムが導入されます。これは、受刑者が自身の犯罪や過去について語り、それを刑務官などの観察者が振り返り、さらに受刑者自身がその振り返りを聞いて、客観視することで、自身の内面と向き合い、改善へのきっかけをつかむことを目指すものです。
 
広島刑務所では、このプログラムのために、リラックスして話せるように緑のカーペットや観葉植物、間接照明が置かれた部屋が整備されています。
また、受刑者の特性に合わせた対応も進められます。例えば、広島刑務所では、心身に障害があるなど集団生活が苦手な受刑者向けに、簡単な作業を通じて就労意欲を高めるための取り組みとして、地元特産の「広島菜」の種作りや販売が行われています。
 
刑事施設では、職員の意識改革も図られています。受刑者への呼び捨てをやめ、「さん付け」にしたり、移動中の集団行進を廃止したりするなど、受刑者との関わり方が根本から見直されています。
 しかし、118年ぶりの大転換には、現場の刑務官から不安の声も聞かれます。業務のあり方が根底から変わり、これまでの受刑者観を180度変える必要があるためです。
 
この点について、犯罪学の専門家である龍谷大の浜井浩一教授は、不安は避けられないとしつつも、旧制度で再犯率が改善されなかった現状を踏まえ、受刑者が社会の一員として戻ることを目指す「更生」へのシフトを、国民全体が理解することが重要だと指摘しています。国民の意識が変わることで、刑務官の意識も変わり、制度が定着していくと考えているようです。
 
「拘禁刑」の導入は、日本の刑事司法が、ただ罰するだけでなく、一人ひとりの受刑者の更生を社会全体で支えていく方向へと変化していく、その象徴と言えるでしょう。盗人にも三分の理ではございませんが、罪を憎み人を憎まず。
 

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