アキバのつぶやき

2025.05.30

TACO理論とは

 タコ理論?なんだぁ?

 最近、ドナルド・トランプ米大統領が、ある言葉について記者から質問された際にいら立ちを隠さなかったというニュースがありました。その言葉こそが、「TACO」です。

 この「TACO」とは、「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもチキって〈おじけづいて〉退く)」の略語で、現在、ウォール街のトレーダーの間で広く使われているユニークな言葉です。これは、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のロバート・アームストロング記者が考案したもので、トランプ氏の政策が市場を混乱させ始めると、すぐに撤回する傾向があることを指摘するために生まれました。
 アームストロング記者は、投資家たちが「トランプ政権は市場や経済からの圧力に対する耐性があまり強くなく、関税が痛みを生じさせるとすぐに引き下がる」ことに気付き始めていると結論づけています。まさに、これが「TACO理論」なのです。
 この理論の根拠となる具体例はいくつかあります。例えば、トランプ氏が世界中に課していた巨額の「相互関税」を一時停止すると発表した直後には、株価が急騰しました。また、最近では欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税を課すと発表したものの、そのわずか2日後には発動を延期すると発表しています。こうした市場の反応や状況に応じて柔軟(あるいは朝令暮改とも)に対応する姿勢が、この理論の背景にあります。

 トランプ氏のこのような行動の根底には、1980年代にニューヨークで不動産デベロッパーとして成功した際に磨かれた、市場取引の浮き沈みに対する鋭敏さがあると言われています。特に第1次政権時には、ウォール街での鋭い反応が、トランプ氏の考えを変える唯一の方法となることもあったようです。
 「TACO理論」はFTのコラムを越えて急速に広まり、アナリストたちは、投資家の間では単なる皮肉を超え、実際に取引戦略としても注目されるようになっていると指摘しています。デンマークの投資銀行サクソバンクの専門家が、この理論を自身のポッドキャスト番組の見出しに使用したことからも、その浸透ぶりがうかがえます。

 トランプ氏本人が質問に対して激怒したというほど、この「TACO理論」は金融市場関係者の間で無視できない影響力を持つ言葉となっているようです。市場との関係性を示す興味深い事例と言えるでしょう。

コメント

コメントフォーム