アキバのつぶやき

2026.02.07

不動産営業と立候補について

 不動産営業という仕事は、誤解されやすい。

 「物件を売る仕事」だと思われがちですが、本質はそこにはありません。不動産営業の本質は、顧客の意思決定に、立候補する仕事です。

  ここで「立候補」という言葉の意味を、漢字から考えてみます。
「立」とは、自ら立つこと。誰かに指名される前に、自分の意思で名乗り出ることです。不動産営業において、これは何を意味するのか。それは、「言われたことだけをやる営業」ではなく、「自分から提案する営業」であるということです。
 顧客が「何か良い物件はありませんか」と言う前に、こちらから「この選択肢はどうでしょうか」と提示できるかどうか。ここに、営業の格差が生まれます。

 次に「候」。
これは、状況を読むという意味です。不動産営業において、最も重要なのは物件情報ではありません。顧客の人生の文脈です。年収、家族構成、勤務地、資産状況。それだけでは足りない。本当に読むべきなのは、「この人は、どんな未来に投票しようとしているのか」という兆しです。 価格の話をしているのに、目線がどこか不安げな人。立地の話をしているのに、家族の話をやたらとする人。優れた営業は、物件ではなく「兆し」を見ています。

 最後に「補」。これは、欠けているものを埋めるという意味です。顧客は、必ずしも自分が何を求めているかを言語化できていません。 むしろ、ほとんどの場合、言語化できていない。だからこそ、不動産営業の役割は、「物件を提示すること」ではなく、「顧客の言葉にならない欠落を補うこと」にあります。

 例えば、「駅近がいい」という言葉の裏には、「子どもの将来が不安だ」という感情があるかもしれない。「予算は抑えたい」という言葉の裏には、「失敗したくない」という恐怖があるかもしれない。不動産営業とは、その恐怖や不安を、構造的に埋めていく仕事です。

 ここまで考えると、不動産営業とは、単なる販売ではありません。顧客の人生に対する、ひとつの立候補です。「この選択肢を、私は支持します」「この未来を、私は提案します」そう言える営業だけが、選ばれる。逆に言えば、立候補しない営業は、必ず負けます。無難な提案、平均的な資料、当たり障りのない説明。それらはすべて、「無投票当選」を許す行為です。

 不動産市場は競争市場です。しかし本当の競争相手は、他社の営業ではありません。顧客の「現状維持」という強力な候補者です。不動産営業とは、顧客の人生における選挙に、自分の提案を掲げて立つ行為である。そう考えると、この仕事は、少しだけ、違って見えてきます。

 今日も、「アキバのつぶやき」に来てくださって、ありがとうございます。

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