アキバのつぶやき

2025.12.27

説明について雑感

 先日、京都法務局に出向いたときに、来年一月より登記台帳の申請費用が変更されるという説明を受けました。私の理解力が足りないのですが、全く理解できず、その場を繕いました。私の偏見だと思いますが、どうも国の説明はどの分野でも理解できにくいのが多いと思うのです。年金は最たるものです。わざと解りにくくしているのかと思うほどです。

 さて、不動産の取引でも、「分かりやすくしてほしい」と言われやすい分野はありません。重要事項説明書、契約書、法令制限、ローンの条件。説明する側は真面目に話しているのに、聞く側は途中から思考停止してしまう。これは能力の問題ではなく、設計の問題です。

 不動産の説明が分かりにくくなる最大の原因は、「全部説明しようとすること」にあります。宅建業法上、説明すべき事項が多いのは事実です。しかし、説明すべきことと、理解してもらうべきことは同義ではありません。ここを取り違えると、説明は一気に難解になります。

 分かりやすい不動産説明の第一歩は、「この物件で一番大事な判断軸は何か」を一つに絞ることです。たとえば、「この物件は資産としてどうか」「住み心地はどうか」「将来売れるか」。

 すべて重要ですが、同時には理解できません。ですので、商談のたびに、今日はどれを持ち帰ってもらうのか。そこを決めるだけで、契約時の重要事項説明の骨格が定まります。

 次に必要なのは、「知らなくても困らない情報」を意識的に後ろへ回すことです。 用途地域や建ぺい率・容積率は重要ですが、購入者が何を実現したくて、この物件を購入しようとしているのか、最大の重要事項です。

 「この物件では、あなたの実現したい夢と建築物は可能です」。
ここが腹落ちすると、細かい数字はあとから自然に入ってきます。
不動産説明も「因果を一本にする」作業です。価格が高い理由、安い理由。便利なのに売れ残っている理由。何か一つ、納得できるストーリーを提示することです。

 さらに重要なのは、説明のゴールを「理解」ではなく「次の行動」に置くことです。良い不動産説明とは、「分かりました」で終わる説明ではありません。「もう一度現地を見たい」「家族に相談したい」「ローンの事前審査をしてみたい」。この一歩が自然に出てくるかどうかが成否を分けます。

 最後に、不動産説明で最もやってはいけないのは、「専門用語で安心させようとすること」です。専門用語は信頼を生むどころか、距離を生みます。信頼は、難しい言葉ではなく、シンプルな因果から生まれます。

 不動産の説明が分かりやすいとは、親切に全部話すことではありません。相手が判断するために必要な一本の軸を示し、そこから外れる情報を勇気をもって削ることです。説明とは、情報提供ではなく、意思決定の設計なのです。

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