アキバのつぶやき
2025.12.22
フラット35の限度額増額をどう考える!
フラット35の限度額が1.5倍になるというニュースは、不動産業界・住宅業界に身を置く人間にとっては、正直なところ「助かる話」です。成約のボトルネックが一つ外れるからです。買いたい人が増えるのではなく、「買える人」に見える人が増える。この違いは小さいようで、本質的です。
ここ数年、住宅価格はじわじわと、しかし確実に上がっています。建築費、人件費、資材価格。どれも下がる理由がありません。その一方で、実需層の所得が劇的に伸びているわけでもない。結果として現場では、「物件はあるが、通らない」「欲しいが、届かない」という宙づり状態が常態化しています。
そこに限度額1.5倍です。これは需要喚起というより、需給のズレを金融で埋めにいく施策と見るべきでしょう。業界的には、成約率が上がり、価格調整をせずに済む。短期的には歓迎すべき話です。ただし、ここに構造的な危うさもあります。
不動産業界は、価格が上がるときほど「売れる理由」を制度のせいにしがちです。金利が低いから、制度が拡充されたから、という説明は、お客様にとって分かりやすい。しかしそれは、物件そのものの価値ではなく、借りられる力に依存した売り方でもあります。
金融の下支えがあるうちは、市場は静かに回ります。しかし、もし金利環境が変わったらどうなるのか。限度額が広がった分だけ、出口の選択肢は狭くなる。中古市場での流動性、買い替え耐性、そして担保価値。これらは、後になって効いてきます。
不動産業界にとって本当に必要なのは、「いくらまで借りられますか」という話よりも、「この物件は、環境が変わっても持ち続けられますか」という問いを提示することではないでしょうか。制度に背中を押されて売るのは簡単です。しかし、信頼を積み上げるのは、いつも逆風のときです。
フラット35の限度額1.5倍は、業界にとっての追い風であると同時に、足腰を試す風でもあります。その風にどう向き合うかで、不動産業者の真価が問われているように思います。