アキバのつぶやき

2025.11.01

人間関係について

 26年ぶりに逮捕された犯人が、被害者の夫の同級生だったというニュース。 この出来事を耳にして、私たちはまず「なぜそんなことが起こるのか」と驚く。しかし、少し視点を引いてみると、そこには「人間関係と信頼の構造」という、より普遍的なテーマが浮かび上がってきます。

 人間関係は、多くの場合「近さ」と「安心感」でできています。ですが、この近さこそが、時に最大の盲点になります。信頼は本来、リスクを前提に成り立つものです。完全に安全な関係など存在しません。むしろ「信頼している」という言葉の裏には、「裏切られるかもしれないけれど、それでも任せる」という覚悟があります。
 
 殺人事件のような極端な事例でなくとも、職場や組織の中で似た構造を見かけます。長年の付き合いだから大丈夫、彼は同じ釜の飯を食った仲だから、という思い込みが、往々にして判断を鈍らせます。人間は、知っている相手ほど見ます。関係の深さが安心を生み、その安心が観察を曇らせるのです。

 時間が経つほど、信頼は自然に深まるように思われがちですが、実際には「確認されない信頼」は、少しずつ劣化していく。26年という歳月の中で、被害者家族の時間は止まり、加害者の時間は進んでいきました。信頼の構造もまた、放置すれば風化する。

 私たちにできるのは、時間を過信せず、関係を定期的に見直すことです。「昔から知っている」という理由ではなく、「今も見ている」「今も聞いている」という関わりの積み重ねこそが、本当の信頼を支えると思うのです。
 
 時間は、癒しにも逃避にもなります。だからこそ、信頼を維持するには、意識的な“再接続”が必要なのではないでしょうか。

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