アキバのつぶやき

2025.10.20

正解を求めるより、良い問いを育てる

 人生には、これだという正解はありません。これはビジネスにもまったく同じことが言えます。どんなに優れた営業トークでも、すべての顧客に通じる“正解”は存在しません。だからこそ、私たち不動産営業の仕事は「正しい答えを出す」ことではなく、「正しい問いを立てる」ことから始まるのだと思います。

 お客様と向き合うとき、つい「この物件をどう勧めるか」という視点に立ちがちです。けれども、本当に大切なのは「なぜそのお客様が家を求めているのか」「何を叶えたいと思っているのか」という問いを立てることが大切です。この“なぜ”を掘り下げることができれば、会話の質が一気に変わります。単なる物件紹介が、人生設計の対話へと変わるのです。
 
 例えば、「駅から近い家がいい」と、お客様から言われたとき、それをそのまま条件として受け取るのではなく、「なぜ駅近がいいのか」と尋ねてみる。そこには、通勤の利便性だけでなく、家族との時間を少しでも増やしたいという思いが隠れているかもしれません。その“思い”に触れたとき、私たちは初めて本当の提案ができるようになります。
 
 営業という仕事は、相手の心の中にある“まだ言葉になっていない願い”を引き出す営みです。すなわち、”言語化力”を養うことは、これからの営業パーソンに必要なスキルの一つとなります。そのためには、正解を押しつけるのではなく、良い問いを差し出すことが求められます。問いとは、相手の思考を深めるためのきっかけであり、信頼を築くための最初の一歩でもあるのです。
 
 人生と同じように、住まい選びにも唯一の答えはありません。あるのは、それぞれの人の「納得のかたち」です。その納得にたどり着くために、私たちは答えを語るよりも、問いを重ねるべきなのだと思います。
 
 正解を求める営業から、問いを立てる営業へ。そこにこそ、長く信頼されるプロフェッショナルとしての道があるのではないでしょうか。

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