アキバのつぶやき

2025.10.13

「売れるものを作る」不動産ビジネス

 ユニクロの柳井正会長が、日経新聞の取材で語った、「作ったものを売る商売から、売れるものを作る商売へ」という言葉は、製造業だけの話ではございません。私たちの不動産ビジネスにも、そのまま響く言葉です。


 これまで多くの業者は「できた物件をどう売るか」という発想で前線に立ってきました。間取り、立地、価格、広告。いずれも「出来上がった商品をどう売り切るか」の議論です。 でも、いま必要なのは「その物件が、誰のどんな暮らしを支えるのか」という構想から逆算して設計する発想が求められます。

 「売れるものを作る」とは、単にマーケティングを強化することではございません。生活者の価値観の変化、働き方や家族構成の多様化を読み取り、「住まい」という概念そのものを再定義することだと思うのです。
 
 たとえば、コロナ以降に増えたリモートワーク需要をどう捉えるのか。単に「書斎スペースをつけました」では不十分です。それは「作ったものを売る」発想です。むしろ「家庭と仕事の境界を柔らかくつなぐ住空間とは何か?」という問いから設計を始める。これが「売れるものを作る」につながる発想です。

 今回の柳井会長の言葉の背景には、「供給と需要をつなぐ」だけの商売から、「価値を構想する」経営へのシフトがあるように感じます。不動産もまた、単なる建物や土地を扱うビジネスではなく、「人の暮らしという時間をデザインする産業」であると捉え直すべき時がきたということだろう。そのためには、営業マンも“売り手”ではなく、“共創者”でなければなりません。

 顧客の生活観を聞き出し、潜在的な欲求を形にする。その対話力と、読解力と言語化力が、新しい付加価値を生み出します。営業マンに求められる能力は、多様化の時代になり、ますます向上していきますね。だからこそ、ここで差別化を見いだせる不動産業者が、生き残っていくことになるのでしょう。

 柳井会長の言葉の、「売れるものを作る」は、不動産会社にとっては、結局のところ「未来の暮らしを編集する企業」に変化しろ!、に尽きます。

 単に物件を売るだけではなく、「この場所で、こんな人生を描きたい」と思わせる物語を提案できるかどうかが、今後の不動産営業に求められるセンスではないかと強く感じました。

コメント

コメントフォーム