アキバのつぶやき
2025.10.11
関係を続ける力と、終わらせる勇気
詩人・吉野弘の「祝婚歌」は、その昔、結婚式などでよく朗読されました。一見、結婚を祝う詩ですが、その本質は“関係のマネジメント論”に近いとおもいます。
「正しさを主張するために 相手を傷つけてもいいという考えを、捨てること」
この一行には、組織経営の核心があるのではないでしょうか。経営者は常に「正しい判断」を求められるが、正しさを振りかざすほどに人は離れていくものです。組織を動かすのは論理ではなく、関係の質です。
たとえば、今回の自民党と公明党の連立関係は、政治の世界における長期的な協働モデルでした。理念の違いを抱えながらも、互いを尊重し、妥協と調整を積み重ねてきました。企業経営に置き換えれば、異なる文化や価値観を持つパートナー企業との「共創関係」をいかに維持するか、というテーマに相通じます。
ですが、どんな関係にも“最適期限”がございます。環境や目的が変われば、関係の再定義が必要となります。それを怠ると、関係は惰性に変わり、やがて摩擦と疲弊を生む結果を招きます。だからこそ、「終わらせる勇気」もまた、経営の力なのだと言えます。
それと、祝婚歌の中に、もう一つの示唆がございます。
「二人が睦まじくいるためには、愚かでいるほうがいい」
この「愚かさ」とは、柔軟さのことととれます。完全な合理性を求めず、相手の立場を許容する余白を残す。経営者に必要なのは、賢さではなく、関係を活かす知恵です。 関係を築く力と、終わらせる勇気。この両方をバランスよく保つことが、成熟した経営の条件の要です。
「勝つこと」よりも「ともに機能すること」に価値を置き、必要なときに静かに距離を取り直す。それこそが、変化の時代をしなやかに生き抜くリーダーシップではないでしょうか。