アキバのつぶやき

2025.10.10

幸運は準備された心のみに宿るから

 フランスの科学者ルイ・パスツールの言葉に、「幸運は準備された心のみに宿る」というものがあります。ノーベル化学賞を受賞した北川進教授のニュースを聞き、この言葉を初めて知りました。
 
 北川教授が取り組んだのは、分子レベルで空間を設計する「多孔性配位高分子(MOF)」という分野です。周囲が関心を示さない時期から、ひたすら基礎研究を続けてこられました。結果として、その「地味な準備」が世界を変える発見につながったのです。
 
 不動産ビジネスの現場でも、同じ構造があります。売却や仕入れの「タイミングが良かった」と言われることがありますが、実際は偶然ではありません。日々、現場を歩き、地域の変化を観察し、地域の肌感覚を積み重ねている人ほど、「偶然のような幸運」、セレンディピティをつかみ取っているのでしょう。同時に野村克也監督の言葉を思い出します。「勝ちに不思議あり、負けに不思議なし」です。日々の地道な営業努力を怠っていれば、商談の場をいただくことはできないという事です。
 
 たとえば、ご相続物件のご売却相談が急に舞い込むことがあります。それを「運が良かった」と片づけるのは簡単ですが、背景には、普段から誠実に地域との関係を築き、信頼を積み上げてきた努力があります。つまり「準備された心」が、偶然の出会いを必然の成果に変えているのです。
 
 市場が大きく動くときほど、この差が顕著になります。金利上昇や税制改正といった外部要因はコントロールできません。しかし、その変化をチャンスに転じられるかどうかは、過去の準備量に比例します。情報収集を習慣化し、法改正や都市計画の動向に敏感であるほど、“運”が味方する確率は高まります。
 
 北川教授の研究人生が示しているのは、「運を待つ人」ではなく、「運を呼び込む人」になるという姿勢です。ビジネスの現場においても、成功を左右するのはセンスや運ではなく、地道な準備と観察と洞察の積み重ね。所謂、無形の力の向上と蓄積です。

 結局のところ、「幸運」は外から降ってくるものではなく、内側から迎え入れるものと定義づけできます。北川教授のノーベル賞は、研究者だけでなく、不動産業に携わる私たちにとっても、深い示唆を与える、貴重でありがたい出来事だったのではないでしょうか。

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