アキバのつぶやき

2025.10.05

利益は目的か、それとも条件か?

 企業経営を考えるとき、必ずといっていいほど議論になるのが「売上か、利益か」という問いです。多くの企業は売上を追います。理由はシンプルで、分かりやすく、成長を示すシグナルになりやすいからです。しかし、売上の大きさだけでは企業の持続性を保証しません。

 そこで「税引き後利益を目標にすべきではないか」という考えが出てきます。確かに、最終的に株主や経営者が自由に活用できる資源は税引き後利益に集約されます。投資を続け、組織を存続させるために、この数字を重視するのは合理的に見えます。

 しかし、ここで重要なのは「目的」と「指標」を混同しないことです。利益を目標にすることは正しいかもしれません。ですが、それを企業の存在目的と取り違えると本末転倒になります。企業の目的は顧客価値の創造にあります。そして、利益はその結果として生まれる成果であり、活動を持続させるための“条件”なのです。

 この点をドラッカーは明快に表現しました。「利益は目的ではなく条件である」と。人間の身体にたとえれば、利益は血液にあたります。血液がなければ生きていけません。しかし「生きる目的は血をつくることだ」と言ってしまえば、それは生命の本質を見誤ることになります。企業も同じです。

 翻って、不動産営業の現場に置き換えてみましょう。目の前のお客様にとって最適な住まいを提案し、納得感を持って契約していただくことが営業の目的です。そこで初めて成果としての利益が残る。利益を最優先に置いてしまえば、顧客との信頼関係は崩れ、長期的には組織の持続可能性が失われます。

 結論としましては、税引き後利益を企業活動の「最終的な成果を測るモノサシ」として据えることは正しい。ですが、それを企業の「目的」として掲げるのは誤りです。

 ミッションは顧客価値の創造、ビジョンはその延長にある未来像。利益はそれを続けるための条件。ただそれに過ぎない。ここを峻別できるかどうかが、経営の本質を捉える分水嶺なのだと思うのです。

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