アキバのつぶやき

2025.09.26

「李下に冠を正さず」と前橋市長会見

 組織のリーダーにとって大事なのは、「正しいことをすること」と「正しく見えること」、どちらがより重いのでしょうか。

先日の前橋市長の記者会見を見て、この問いが浮かびました。市長の言動自体に直接の違法性はございません。しかし、場面の切り取り方やタイミング次第で「怪しい」と受け取られる。ここに「李下に冠を正さず」という故事が重なります。スモモの木の下で冠を直すだけで、盗んでいると疑われるかもしれない。つまり、誤解を招く状況そのものを避けよ、という戒めです。
 
 重要なのは、実態よりも人々の認知です。私たちが誰かを信頼するかどうかは、合理的な検証ではなく、直感的な印象で決まることが多い。これは政治に限らず、ビジネスの現場でも同じです。

 営業マンが顧客の前でスマホを操作していれば、「仕事をサボっている」と思われるか、「迅速に調べている」と評価されるかは文脈次第です。行為そのものよりも、相手に「どう見えるか」が信頼を左右します。

 だからこそリーダーには、「誤解されない仕組み」をあらかじめ設計しておく責任があります。政治であれば透明性の担保、ビジネスであればプロセスのオープン化です。実態の正しさを守るだけでは不十分で、「正しく見える」ようにデザインしなければ信頼は積み上がらないのです。

 「李下に冠を正さず」は、単なる消極的な自己規制ではありません。むしろ積極的に「誤解を生まないように振る舞いを設計せよ」という戦略的なメッセージと読むべきです。前橋市長の会見を契機に、改めてリーダーには「説明責任」と同じくらい「誤解されない責任」が問われているのだと感じました。

 言い訳をする前に、誤解されない行動を常に心掛けなければ、公人としては失格ではないでしょうか。さきの参議院選挙で、国民民主党から公認を外された、元女性国会議員と重なりました。

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