アキバのつぶやき

2025.09.18

明日に向かって!

 『明日に向かって撃て!』を、青年時代に観たとき、あのラストシーンが鮮烈に胸に焼きつきました。逃げ場のない銃撃戦の只中で、ブッチとサンダンスは笑っていた。

 未来などもう残されていないのに、彼らは最後の一瞬を「生きる」という選択で貫いた。若かった私は、その姿を無謀さや虚勢ではなく、むしろ生きる美しさ逞しさとして、受け止めた記憶があります。

 あの二人が追い求めていたものは、決してお金や名声ではありませんでした。時代の流れから取り残された自分たちの存在を、どうやって肯定するか。どうやって「生きる意味」を最後まで掴み続けるか。それこそが彼らの戦いの本質だったのだと思います。
 
 私たちは日々、生産性や、効率、合理性を求められます。無駄を削ぎ落とし、成果を最大化することが当然のように語られる。しかし人生の記憶に残る瞬間は、必ずしも効率的ではありません。あの二人が銃を抜き、絶望的な状況の中で前へ踏み出したときの姿は、合理性からは説明できない。けれども、そこに「人間の尊厳」がありました。
 
 ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが演じた二人は、時代に抗えなかった。しかし彼らの生き方は、観る者に「自分ならどうするか」を問います。明日を信じて撃つのか、それとも今の安全地帯に甘んじるのか。青年時代の私は、その問いに直面し、心をかき乱されたのです。
 
 そして初老の今になって思うのは、人生とは常に「撃つ」か「撃たない」かの選択の連続だということです。確実な未来など誰にもない。それでも歩を進めるかどうかは、自分の意思にかかっている。

 映画のラストで止まった銃声の瞬間、私たち一人ひとりが生きる意味を問われているのかもしれません。

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