アキバのつぶやき

2025.08.29

ないことの有難さ

 朝起き頭が働きだすと、あれもしないといけない、これもしないといけないと、やることばかりに意識が向かい、躍動感が満ちてきます。一方で、「ないことの有難さ」というのは、日常のなかで気づきにくい視点です。私たちは往々にして「あること」に注目します。財産がある、人脈がある、健康がある、時間がある。これらが豊かさを測る物差しのように思われがちです。しかし、冷静に振り返ると「ないこと」こそが、人生の安らぎや秩序を支えていることに気づかされます。

 たとえば、病気が「ない」からこそ、普通に歩いたり食べたりする喜びが当たり前になります。災害や事故が「ない」日常だからこそ、私たちは穏やかに暮らせるのです。つまり、何も起きない平凡な一日こそ、実はきわめて稀有な有難い状態だと言えます。

 ところが人間は欲深いもので、「ないこと」を当たり前と見なし、気づかぬうちに「もっとある」ことを追い求めます。その結果、手に入れたものに満足できず、常に欠乏感を覚えるのです。「お金」が代表的なものです。しかし、ふと立ち止まって「今ここに災いがない」ことに感謝できれば、生活の質は大きく変わります。
 これは「マイナスの状態をゼロとみなすか、プラスとみなすか」という認知の問題です。心理学でも、ゼロは単なる中立ではなく、安定の象徴と捉えられます。無病息災、平穏無事。この「ない」ことが積み重なって、ようやく人は何かを創造したり挑戦したりする余地を得られるのです。
 ですから、「ないこと」を無視せず、静かに味わうことが人生を豊かにしると思います。今日もまた、大きなトラブルが「なかった」。その有難さに気づけるかどうかで、幸福感の深さが決まるのではないでしょうか。これが「ないことの有難さ」ではないでしょうか。

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